金利低下 起債に動く

日銀の金融緩和を受けて、企業が相次ぎ社債発行に動き出す。日産自動車やNTTが4月中に1000億円規模の起債を準備。セブン&アイ・ホールディングスも3年ぶりの社債発行を検討している。先々の設備投資などをにらみ、低コストの長期資金を前倒しで確保する。長期金利の低下が企業の財務戦略にさっそく好影響を及ぼし始めた。

日産の社債は、700億円を調達した2011年4月以来。今回は期間5年、1000億円程度を軸に投資家の需要を探る。セブン&アイは14年2月期に3400億円の設備投資を計画している。手元資金に余裕はあるが、有利な条件で安定資金を調達し、財務面の余力をさらに高めておく考えだ。

ブリヂストンやオリックス、近畿日本鉄道も数百億円規模の社債発行を予定している。NTTは調達資金を傘下の事業会社の設備投資などに充当する方向で検討しているようだ。

社債による資金調達は企業の有利子負債の2割弱を占める。ピークの09年度の発行額は10兆2600億円。企業は潤沢な手元資金を抱えており、12年度の発行額は約8兆円と前の年度比2%減少した。

13年度は日産など大手が期初から積極的に資金調達に乗り出すことで、発行が再び増勢に向かうとの見方が多い。今期、円安などで業績改善が見込めそうな企業は、積極投資に転じるタイミングを探っている。調達資金はいったん借り換えに向かうとみられるが、これが設備など前向きな投資に結び付けば経済活動の好循環が生まれる。

企業の動きが活発になっているのには、大きく2つの理由がある。

まず、日銀の緩和でかつてないほど調達環境が好転している。企業が新たに社債を発行する際のベースとなる長期金利や既発の社債の利回りが低下。比較的格付けが高いダブルA格の社債(10年物)の市場での利回りは0.7%台と過去最低水準にある。10年、20年物といった長期間の社債も利回り低下が鮮明だ。

もう1つ、生命保険会社など債券投資家の運用ニーズの変化がある。今回の緩和策で日銀の国債購入額は月々の国債発行額の7割に相当する規模になる。そもそも国債投資では高い運用益が得られにくくなっているうえ、機関投資家が買える量が細る。そのため機関投資家は相対的に利回りが高い社債への運用意欲を高めつつある。

国内最大のかんぽ生命保険は13年度に国内社債や地方債を1兆9050億円購入する方針を示している。足元の社債保有残高も約6兆6000億円に積みあがっている。

街角景気、過去最高に並ぶ

街角景気が大幅に改善している。内閣府が8日まとめた3月の景気ウオッチャー調査によると、足元の景況感を示す現状判断指数は前月比4.1ポイント上昇の57.3となり、2006年3月に付けた過去最高水準に7年ぶりに並んだ。上昇は5か月連続。輸出企業からは「受注が増えた」との報告が目立った。ただ、先行き判断には、円安による輸入物価上昇の影響を懸念する声もあった。

3月の景気ウオッチャー調査は同月25日から月末にかけて実施し、小売店やメーカー経営者などの約2千人が景気を5段階で評価した。

現状判断指数は好不況の分かれ目となる「50」を2か月連続で上回った。各地域ごとのDIでも、全11地域が「50」を超え、北海道・南関東・北陸・四国の4地域で過去最高となった。

「家計」「企業」「雇用」の全分野が改善した。製造業など円安を背景に、引き合いや受注が増加したとの声が多かった。「円安が値引きと同じ効果を生み、引き合い件数が前年同期と比べて20%ほど増えている」(東海の一般機械部品メーカー)。「(円安で)製品価格が維持され、円高時に比べて業績が大きく改善した」(東北の電気機械部品メーカー)との声もあった。

雇用の面でも改善の兆しが見られた。「製造業や建設業などの現場で人手不足感が出てきている」(北陸の新聞社)。

消費マインドも改善が顕著だ。販売現場では「株価上昇に伴い、美術品や宝飾品などの高額商品が好調」(近畿の百貨店)、「客単価は上がっていないものの、前年に比べて明らかに来客数が増えている」(九州のショッピングセンター)と、消費意欲の伸びを指摘する声が多い。

住宅関連も上向きが目立つ。「消費税引き上げが現実的に見えてきており、本格的な駆け込み需要が始まった感がある」(北陸の住宅販売会社)との声もあった。

ただ、景況判断が今回と並んで過去最高だった06年3月と現在の経済情勢を比べると、日経平均株価は依然として27%程度低い。完全失業率も06年に比べてやや高い水準にとどまる。現在の景況感改善は足元ではまだ期待先行の面が強い。

2〜3か月後の景気を占う先行き判断指数は前月比0.2ポイント低い57.5と、5か月ぶりの低下となった。背景にあるのは輸入価格上昇を受けた原材料の値上がり。財務省が同日発表した2月の国際収支統計によれば、輸入は5兆7428億円となり、前年同月比で11.5%増加した。

企業からは「円安による原材料の値上がりを販売価格にすぐには転嫁できない」(近畿の化学工業)との懸念の声も少なくない。

「円安の影響で値上がりする商品の購入数の落ち込みや買い控えが発生する」(中国のスーパー)と、上向いてきた消費が再び冷え込むのを心配する声もあった。


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