中小保護 監視に限界

消費税増税の価格への転嫁を進める特別措置法案を審査した自民党プロジェクトチームが3月に開いた会合。全国農業協同組合中央会の代表は小売店のコメ特売価格に農協は抵抗できないと訴えた。「値上げを求めると逆にコメの品質を落とせと要求される。品質を落として売れ行きが悪くなれば、取引から外される」

消費税を負担するのは購入した消費者だが、実際に納税するのは販売する事業者だ。法人企業統計によると2011年度の日本企業の売上高営業利益率は2.8%。14年4月に3%上がる消費増税分を企業が価格に上乗せできず自ら負担すれば、多くの企業で利益が吹き飛ぶ。

政府・与党は大企業にモノやサービスを買ってもらう立場で価格交渉力の弱い中小企業に配慮する。17年3月末を期限とする特措法案では、資本金3億円以下の納入企業に対して仕入れ企業が増税の上乗せを拒んではいけない。

小売店には過去の増税時にヒットした「消費税還元セール」を禁止する。セールのために仕入れ企業が納入業者に値下げ圧力をかけるのを防ぐためだ。増税分の上乗せで複数の中小企業が手を握る「転嫁カルテル」も認める。

しかし特措法の違反を監視する公正取引委員会や官庁の人員には限りがある。すべての中小企業を保護するといっても、監視の目が行き届くかは分からない。そのそも製品の価格交渉は増税と関係なく常に起こる。

ある中小企業関係者は「コストが格段に安いアジア企業と受注を競っているときに、値上げ交渉は無理」と語る。日本商工会議所など4団体が約9400事業者を対象に実施した11年時点の調査では売上高5千万円以下の企業の6割超が「消費増税を価格転嫁できない」と答えた。

消費税を価格に上乗せできない企業が利益を削れば、いずれ従業員の賃金抑制につながる。しわ寄せが集まるのはブランド力で価格を維持できる大企業ではなく、下請けなど企業間取引での力の弱い中小企業だ。

対照的に、競争と無縁の公共料金では過去の消費増税時を参考に確実に価格転嫁が進みそうだ。電力やガス、交通費などの値上げは家計の懐を直撃する。

公共料金では消費増税の上乗せで端数をどうするかという問題も大きい。端数をすべて切り上げれば増税分より値上げ幅が大きくなってしまうからだ。そんな便乗値上げを防ぐため政府が5月に示す価格転嫁の基本ルールに沿って各業界・企業は料金を決める。東京瓦斯は「増税分の上乗せ後、円未満の端数は切り捨てる」(広報部)という。

料金が10円谷で増税分を1円刻みで上乗せできない鉄道会社やタクシー会社は前回の消費増税時に原則、四捨五入で対応した。ただ、東日本旅客鉄道は山手線で最短区間の運賃120円が四捨五入だと据え置きとなって消費増税分を上乗せできないため、一気に130円に上げた。

タクシーでは前回、消費税が免税だった年間売上高3000万円以下の事業者の値上げを認めなかったため、初乗り運賃に事業者間で差が出た。今回は14年4月と15年10月の2段階増税となり、企業や増税時期で対応に差が出れば、消費者は困惑しそうだ。


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