大手銀、貸出増加基調

銀行の国内貸し出しに回復の兆しが出てきた。M&A(合併・買収)や事業再編に伴う資金需要が増えているほか、円安の影響で企業の貿易取引に必要な資金が膨らんでいる。今後は日銀の大胆な金融緩和や政府の成長戦略により、銀行を通じたマネーの好循環の後押しが始まる。企業の設備投資の資金需要を刺激し 日本経済を本格回復へと導く効果に期待が集まる。

大手銀行の国内貸出残高は2月で前年同月比1.1%増の198兆円と3カ月連続で前年同月を上回った。三井住友銀行では2月、3月の中堅・中小企業向け貸し出しが5年ぶりに同年同月比で増加。2013年度は年間でも8年ぶりに増える見通しで、国内貸し出しは「ようやく底打ちした」(法人企業統括部)。

りそな銀行でも大企業や中堅企業の大口の借入れが増え、貸出残高は昨年9月以降、前年同月比でプラスが続く。三菱UFJフィナンシャル・グループ、みずほコーポレート銀行でも国内融資は徐々に増えている。

貸出増加の背景には企業の活発なM&Aがある。ソフトバンクによる米プリンスト・ネクステルの買収をはじめ、大企業による海外企業の買収件数は過去最高水準に達した。中堅・中小企業でも後継者不足から事業を売却する例が増えており、関連費用を銀行の融資で賄う場合が多い。

昨年末から急速な円安が進んだ影響も大きい。企業が外貨で輸入代金を支払う場合、同じ数量でお従来より円建ての必要額は増える。円安に伴う資金需要は「この2、3か月で高まっている」(みずほコーポレート銀行)といい、その分貸出残高が上振れしている。

国内銀行全体でも11年秋以降、月を追うごとに貸し出しの増加率が高まっている。地方銀行では大手銀より回復する時期が早く、東北地方で東日本大震災の復興に絡む融資が増えているほか、住宅ローンが伸びている。

今後も増勢が続くかは景気が本格回復に向かう鍵を握る。現状は「景気回復に伴う設備投資に銀行の貸し出しが回るまでには至っていない」(全国銀行協会)。大企業は手元資金が潤沢で、社債市場でも低コストで資金を調達できる。優良企業向け融資では競争も激しく、融資増に収益が比例するわけではない。

安倍政権は金融緩和、財政政策、成長戦略を「3本の矢」とし、円安や株高で企業心理は好転してきた。金融緩和や成長戦略を呼び水に、企業の工場建設などが増えれb雇用や個人消費も回復し、住宅ローンなど個人向け融資の増加にもつながる。アベノミクスがシナリオ通りに進むには、資金の貸し手と借り手である銀行と企業の両方が前向きな融資と投資を増やす必要がある。

黒田ちゃんの下、日銀は3、4日に金融政策決定会合で新たな金融緩和策を検討する。6月からは民間への融資を増やした銀行に低利で資金を供給する新たな制度を始める。強力な金融緩和が銀行の貸し出しを伸ばす効果が期待されている。

保険の銀行窓販 月払いにシフト

銀行が生命保険の窓口販売をテコ入れしている。一時払い保険に加え、医療保険や個人年金保険など保険料を月々払う保険を伸ばしている。大手の明治安田生命保険では銀行窓口での月払い保険の販売件数が前年の3倍近くに拡大。銀行にとっては毎月安定的な手数料収入が得られることもあり、売れ筋商品がシフトしつつある。

保険窓販に力を入れる三井住友銀行では2012年4〜9月期の月払い保険の手数料収入が55億円と前年同期比80%増えた。医療保険や介護保険の商品知識を身に付けるため本売担当者の教育、研修に力を入れている。

保険会社側からみると、明治安田生命が大手銀行や地方銀行を通じて販売する月払いの個人年金保険の契約件数は12年4〜12月に3万6000件と前年同期の2.8倍に増えた。

住友生命保険は終身の介護保険が約1万3000件と70%増。全国の信用金庫を通じて定額年金保険を打っている富国生命保険グループは、同商品の契約件数が60%増の2098件だった。

銀行などは窓口で貯蓄性の高い一時払い終身保険の販売に力を入れてきた。預金に代わる資産運用の手段として薦めやすいからだ。月々に保険料を払う保険は医療保険や個人年金保険など、もしもとのときの収入保障や年を取った後の年金確保など将来不安に備えるものが多い。若い世代を中心に需要は高まっている。

銀行としては保険窓販を伸ばすためには一時払い終身に依存した品揃えを広げる必要がある。利用者にとっても、銀行の窓口で様々な保険から人生設計に応じた商品を選べるようになる。

一時払い終身は一度にまとまった保険料収入が入り、銀行もそれに応じた手数料を得る。ただ運用環境によって販売が変動しやすい。月払いは少額だが長期に安定した保険料収入を確保できる。銀行にも一定の年数は継続して手数料が入る。「保険会社と金融機関の両方に利点がある」(富国生命の米山ちゃん)

東京海上ホールディングス傘下の東京海上日動あんしん生命も金融機関での月払い商品の販売を強化している。今年1月に発売した保険料が全額戻る医療保険は全国の銀行から問合せが引きも切らず、全国71の金融機関での販売が決まっている。

月払い保険は長期にわたり預金口座から保険料が引き落とされ、口座取引が長く続きやすい。東京海上日動火災保険の中村ちゃんは「顧客を囲い込みたい金融機関のニーズと商品が合致した」と話す。

長引く超低金利の影響で生保各社は4月1日以降に新たに契約する一時払い終身保険で保険料の大幅な引き上げに動いており、販売は落ち込んでいく見通し。銀行窓販での月払い保険へのシフトは続きそうだ。

三菱UFJ、中南米拡充

三菱東京UFJ銀行は中南米の事業を拡充する。資源関連ビジネスの伸びが期待できるチリで、サンティアゴ支店の資本金を3倍にしたほか、今後2年程度でメキシコの人員を1.5倍の100人規模とする。各国の経済成長に伴って日系企業の進出が増えるとみており、現地での支援体制を充実させて、資金需要を取り込む。

三菱UFJのサンティアゴ支店はチリ唯一の邦銀拠点。このほど7000万ドル(約66億円)の増資を完了し、資本金を3倍にした。チリは資本の規模に応じ融資額や預金額に制限を設けている。銅の生産などで商社の投資が見込まれており、増資で取引拡大を目指す。

メキシコに置く現地法人の体制も拡充する。昨年8月に地場資本としては同国最大手のバノルテ銀行と業務提携した。日系企業の進出が増えており、貸し出し増に対応するため、従業員も増やす。

三菱UFJは中南米で9か所の拠点を持ち3メガ銀では突出している。昨年にはコロンビアやペルーの拠点を相次ぎ出張所に格上げして、営業活動ができるようにした。

中南米での経常収益は2012年4〜9月期に109億円と前年同期比63%増えた。海外事業全体に占める割合は数%だが、今後は現地企業との取引にも力を入れ、資源開発やインフラ事業などプロジェクト融資の需要取り込みも目指す。


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